おもて面・・情報公開と公文書管理について

裏面・・マイナンバーカードの行方

情報公開と公文書管理について

 「記録を残すのは、大げさに言えば歴史を積み上げている。その石垣は一つ一つがちゃんとした石じゃないと困る。正確な文書を積んでくださいということです」
 「改ざんだとか資料が無いというようなことは当初考えてなかった。あり得るのかと思いました」
 これは、2018年6月1日に日本記者クラブで行われた記者会見での福田康夫・元首相の発言です。(同記者クラブサイトより)。森友、加計両学園や自衛隊の日報などを巡る記録のあり方が問題になっていた時期に行われたものです。
 福田元首相は在任時に公文書管理制度に積極的に取り組み、「公文書等の管理に関する法律」の制定に道筋をつけたことで知られています。
 森友・加計問題後も安倍政権では、官邸における首相や官房長官の各省庁との打ち合わせ記録などがまったく作成・保存されていないことが問題となり、文書管理と情報公開において甚だしく不透明なままです。
 9月市議会一般質問では、武蔵野市における情報公開と公文書管理について質疑しました。

 情報公開の現状

 武蔵野市情報公開条例に基づく情報開示請求は、この5年間に692件。うち全部開示206件一部開示399件などとなっています。請求人による開示が不十分との不服審査請求によって、情報公開審査会での審査が行われたのはこの2年間で11件で、うち全部開示3件、一部開示7件となりました。
 不服審査申し立てが行われたものについて、審査会の審査を経て、非開示から開示へと変更された例が10件あり、行政担当部署と有識者の審査会とで、情報開示の対象範囲について考え方の違いが出てきています。開示についての考え方が最新の知見を反映したものになっていない可能性があります。松下玲子市長は、「いちがいに遅れているとは考えていない」と答弁しましたが、今後の改善が求められます。

 公文書管理をめぐって

 情報公開の基礎となる公文書の管理は、「武蔵野市文書管理規則」に基づいて行われています。同規則第3条には「意思決定に至る過程並びに市の事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう(中略)、文書を作成しなければならない。」とあります。
 だが実際には、開示請求によって得た資料から政策決定の経緯と根拠を理解することが難しい事例があり、資料・文書作成が本来の趣旨に沿ってきちんと行われているか、疑問があります。実態の改善が求められます。
 また、公文書管理を規則ではなく条例で定める自治体が徐々に増えています。市民や議会ともその趣旨や目的を共有し、より透明性の高い市政運営を実現するために、公文書管理条例の制定を目指すべきです。
 歴史的な公文書については、「武蔵野市歴史公文書等の管理に関する条例」が2014年に定められており、武蔵野ふるさと歴史館において、専門官の管理のもと保存・公開が進んでいます。引き続きの取り組みに期待します。

マイナンバーカードの行方

 9月市議会では、情報公開・公文書管理に加えてマイナンバーカード制度を取り上げました。

 カード保持率はさらに低下へ

 マイナンバーの通知カードはすでに全世帯に送られています。一方で、電子証明チップを埋め込んだマイナンバーカードの取得は武蔵野市内では現在23000件あまり、取得率は16.1%で、全国平均の約13%を少し上回る程度との市長答弁でした。
 マイナンバーカードの有効期間は10年ですが、内蔵されている電子証明チップの有効期限は発行から5回目の誕生日で切れます。電子証明の使用のためには、更新が必要です。
 電子証明チップを更新する人は、何らかの形でカードのオンライン利用をしている人と考え、例えばコンビニでの住民票等の発行件数を確認したところ、年間約4000件(延べ件数)程度であり、市民全体の3%未満に止まります。e-Taxの自宅からの利用(カードリーダーが必要)などは正確な数字はわかりませんが、ごくわずかと見られます。おそらく電子証明書の更新率はカード所持率を大幅に下回ることになります。私は、5%から多くても10%の保持率になると予測しています。

 カード普及策は何のため?

 このような実態に危機感を覚えたのか、政府のデジタル・ガバメント閣僚会議では、マイナンバーカードの普及策として、民間事業者のキャッシュレス決済サービスと連動させ、カード取得者にポイントを付与するサービスなどを検討しています。
 ここまでして普及に躍起にならねばならない理由は一体何でしょう。民間事業者のポイントカードへの誘導、キャッシュレスの普及などは公が税金を使って推進するものではありません。
 リクナビによる就活生の内定辞退率の企業への販売など、明らかな個人情報法保護法違反が明るみに出、各種SNSをめぐっても個人情報の収集は大きな問題となっています。
 マイナンバーの、納税者番号制度としての本来の趣旨に立ち返れば、個人カードの保持・使用の拡大は不要です。プライバシー保護を危うくし、特定の業界の利益にしかならない「デジタル化」推進に強い危惧を覚えます。

 公的行政手続きの考え方

 公的機関のおこなう行政手続きを大幅にデジタル化すべきとの主張があります。技術的にはある程度可能でしょう。しかし、公のサービス提供責任という観点からは考慮すべき大きな問題があります。それは、すべての市民に公平に提供されること、アクセス可能であることです。
 例えば住民票の発行は、市役所や市政センターの窓口でおこなうのと同時に、自動交付機に加えコンビニでのオンライン交付が行われています。オンライン交付ができるからと言って、窓口での交付事務を廃止できるでしょうか。それは、オンライン手続きのできない人を排除することにつながります。また、行政事務手続きには、市民とのていねいな相談を伴うことがしばしばです。デジタル化を前提に対面事務を廃止したり、大幅に減らしたりすることは、公的機関の役割を損ねてしまう可能性があります。
 結局実際には、対面事務とオンライン事務を共に運営することが必要で、経費は二重にかかります。
 公共の果たす役割とは何か。デジタル化についてもその観点からの深い検討が必要であり、軽々しい対応は慎むべきです。