2018年11月ニュースを発行

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柔らかい働き方を広げよう・・障がい者・若者の雇用について

 障がい者雇用率の問題

中央省庁や地方自治体での障がい者雇用率のごまかしが明るみに出ました。制度本来の趣旨にまったく沿っていなかった実態を見て、深く考えさせられるものがあります。
雇用率は2018年4月から民間企業では2.2%(従業員45.5人以上)、国・地方公共団体では2.5%(同40人以上)に引き上げられました。一方で日本全体の中での障がい者の比率は約7.4%(2018年4月厚生労働省発表)であり、いわゆる稼働世代ではおよそ5%と言われています。これらの数字を比較してみると、法定雇用率の達成だけで雇用における差別を解消したことにはなりません。
さらに言えば、社会の中での障がい者の比率についての考え方は世界の各国によって大きな差があります。OECDがまとめた障がい者割合(20〜64歳人口)はOECD19カ国平均で14.0%です。スウェーデンの20.5%をトップに北欧諸国はおよそ20%程度。アメリカが10.5%などとなっているのと比べ、日本はOECD諸国の中では障がい者を「認定する」率が非常に低く抑えられているのです。
OECD各国の主流となっている「障がい」という考え方は、身体的あるいは精神的な何らかの理由によって就労や社会参加が阻害されている状態を指します。これが、ソーシャルインクルージョン(社会的包摂)を進める上でのベースとなります。日本では残念ながらまだこのレベルに達しておらず、「目が見えない」とか「足が不自由で歩けない」などの医学的理由によるものに限られる傾向が強いものになっています。
このように考えると、このかんの雇用率未達成問題は、たんに基準がクリアできたかどうかという数合わせ的な作業に終わらせてはならず、もっと大切なところを議論していかねばなりません。

 職場が変わる

例えば職場における男女比が半々であることが望ましいというのと同じ立場に立つと、障がい者雇用は法定雇用率を大幅に上回らなければなりません。それが将来における社会的包摂のあるべき姿だと考えます。その場合、何より職場のあり方自身が変わらねばなりません。
下肢の麻痺で車椅子生活だが、そのほかは「健常者」と同等に働ける、というような人たちだけを対象とした雇用率達成で、本来の差別解消の目的を達したとは言えないのです。
公的機関は、このかんの雇用率ごまかし問題を受けて、向こう数年障がい者雇用を大幅に増やさなければなりません。ここで初めて、障がい者雇用の本質が問われると私は考えています。身体的障がいだけでなく、知的や精神障がいの人たちと共に働ける職場、企業のあり方を創造していくことが求められるのです。

 若者の貧困にも

北欧諸国が、人口に占める障がい者割合を2割程度と捉えていることを先ほど紹介しました。日本にも、メンタルの問題も含めなんらかの理由によって思うように働けていない人々、事実上職場や社会から排除されている人々が大勢います。
「若者の貧困」の要因の中に、職場への不適応から離職、引きこもってしまうなどのケースが増加しています。発達障害の子ども・若者も増えています。
「障がい」の考え方を社会的包摂の視点から考え直し、社会全体で抜本的な取り組みを進めていく時期に日本もさしかかっているのです。
障がい者支援の国や自治体の政策は、この20年間、大幅に前進してきました。かつては障がい者は隔離することが基本であった時代から、それぞれの障がい=「できないこと」を支援し、地域で暮らせるような仕組みづくりが進められてきました。障がい福祉の予算も大幅に増加してきました。
隔離から支援へ。そしてこれからは本格的な社会参加、社会的包摂を実現することが時代の要請です。

 地域が変わる

就労支援のためのNPOなどによる活動も広がり、最近は株式会社による就労支援事務所も増えています。課題は受け入れる側の企業を増やすことです。地域の中でまずは体験就労からでも受け入れてくれる事業所を広げていくことです。商工会議所などの各団体もそのために役割を発揮してもらう必要があります。
障がい者雇用率の算定は、原則週30時間以上の正規雇用で、週20時間以上の短時間労働も算定対象になります。しかし実際には、それ以下の短時間就労から始めて徐々に経験を積んでいく必要のあるケースがたくさんあると聞きます。そういう人たちにも多様な機会が提供されることが望ましいです。この点では、自治体の政策において配慮が必要です。
雇用率にこだわることなく、様々な形で柔らかい働き方が地域の中で広がっていくこと、そうした人々が層的に形成されていくことが、多くの就労を生み多様性を排除しない地域社会を作っていくことにつながると考えます。
地域ぐるみでの取り組みを進めましょう。